はじめに

Fragments of Thought 日々考えているテキスタイルをめぐる考えや、制作プロセスなどを書き留めていきます。3つのカテゴリー、 Theory and Critique (理論・批評) 、 Material and Texture (物質と質感)、 Process & Experiments (プロセスと実験)にわけて、布や糸、素材が持つユーモアや人間のような不完全さ、機能や構造、歴史など幅広く派生的に思考を巡らせます。思考を重ね合わせ、美学を造形作品につなげることを目指しています。 制作を通して人間とは何かを見つめていきたい。

【Practice & Experiments】Thinking and making

素材:絹布、ロウ、テグス 過去の作品を整理。FADの時の大切な作品。これは自分と他者との関わりをテクスチャーにできないかなと考えて制作した。意識と無意識の中間の感触のような素材感。主観的なイメージだが、身体は家のようなもので、窓は他者と関わるときのコミュニケーションの窓口のように思えていた。そんな素材が中心の造形。大きさは、それぞれ手のひらくらいで、半透明で柔らかみのあるテクスチャーのロウを使用した。 私はUALのチェルシーという学校で学んでいたが、その時はEva Hesseが好きで、たくさん影響を受けた。最近改めて、Eva Hesseを見返し、彼女が活躍した時代を見ていてヨゼフ・アルバースに辿り着いた。アルバースの教え子はヘスだけではなく、沢山の有名なアーティストがいる。自分の作品に関しては、『配色の設計』から何かヒントを得られないだろうかと。主観的なアイディアから、もう少し客観的な視点で作品を展開させたい。ドライで明るい作品がいい。Roman Signerの作品は楽しい。そういえば、ロバートラウシェンバーグもデ・クーニングもも未消化なままだったけど、今は海外の美術館のアーカイブにアクセスできるのが幸いだ。

2026年9月26日

【Material and Texture】糸の束、線の跡

糸の束のテクスチャー ずっと糸を束ねて面にする作業を飽きずにやっている。これでいいのかな、と思いながら、最近は織の挑戦も始めた。でも、やっぱり糸が集まり、一本一本の影ができ、質感を持った線になる感じがどうしても好きなのだ。色を変えるとまた違って見える。いつも新鮮。なんか、糸たちは気ままだなーと眺めているのも、ぼーっとした穏やかなで平和な時間。 思い返すと糸の束に関しては、長らく試行錯誤してきた。最初はしつけ糸の束をボンドでトレーシングペーパーに貼ってみたり、それからチュール生地に刺繍することをみつけて、長らく刺繍していた。糸の束をミシンで縫い付けて固定することを発見してから、今に至る。これでいいのかな。

2026年6月1日

【theory】テキスタイルと言語

言葉の中に織り込まれたテキスタイル 組織、思索、検索、索(つな・なわ)、組む、テンション、〇〇に染まる、 tapestry of culture, spin a yarn, interwoven 日本語でも英語でも、私たちはテキスタイルに由来する言葉を使ってコミュニケーションをとっている。テキスタイルは、私たちの生活、思考、社会の中に組み込まれている。 私たちは無意識に、織る、染める、組む、編むという、布を作る過程やテキスタイルそのものを手助けとして言葉を編み出してきた。そして今日もまた、私たちはテキスタイルとその概念が織り込まれた世界で生きてゆく。テキスタイルと言語の関係を見ていくことは、人間とは何かという問いに、一つの答えを与えてくれるような気がする。英語のtextileはラテン語のtexcere(編む、織る)に由来し、テキスタイルと思考の構造を読み解く助けになりそうだ。

2026年6月1日

【theory】ファイバー、テキスタイルアート

ファイバーアートは1960年代頃からアメリカやヨーロッパから始まり、そして日本でもブームみたいに花開いて、やがてファインアートの表現言語の一つとして吸収されていった。マグダレーナ・アバカノヴィッチはテキスタイルアートを飛び越えてファインアートのアーティストとして認知されている。イギリスのゴールドスミスカレッジにもかつてはTextilesの専攻があったが、やがてFine Artに統合された。それは、ファインアートの中でテキスタイルに関わる限りは、強靭なコンセプトなり、素材や構造や概念的な必然性が求められるという時代の流れだと思う。テキスタイルの理屈っぽくない造形の面白さもいいと思うが、きっと現代アートの中のテキスタイルも楽しい。 私とテキスタイルとの出会いは、テキスタイルアートで有名な佐久間先生を通してだった。少しだけ先生に師事し、大好きになったのだ。工業生産の布しか知らなかったので、布を自分で作れるということにワクワクした。そして子供の頃から大の手芸好きだったので、留学した時にイギリスのテキスタイルコースではニットや刺繍の専攻もあると知って、手芸好きでも学位が取れるのがすごいなと嬉しくなった。

2026年6月1日

【Practice & Experiments】窓とカーテン

カーテンと窓についての本 「カーテン百景」はなかり市で購入したnumariさんの写真集。青森県のカーテンのある風景がおさめられている。ちょっとぶきっちょで、こっけいだったりするけど、生活の匂いみたいなのが布にしみこんでいる感じがなんとも愛おしい。 この本を眺めながら、人と布の関係を考える。カーテン - - - 空間の布。生活に関わる布製品としてカーテンは服や布団よりは遠い、でも、いつもさりげなく存在して心理的な親密さは保ったれているはずだ。内側と外側、見る視点が変われば内的距離も変わり価値も変化する。境界と空間の錯覚、イリュージョン。 「窓から建築を考える」窓についてのエッセイ。私のような窓についての妄想ではなく、専門的な視点で、なるほど、と新しい知識で満ちている。 窓から離れるが、加藤周一の日本の庭、もう一度読みたいな。

【Practice & Experiments】見つからないときは

全ての意味のないこと ものを作ることに意味を見出せない時は、好きな作家の画集を眺める。Carol Boveの作品集は、一人の作家がどのように造形と向き合ってきたかを知れる貴重な一冊だ。さまざまな過程を経てコラージュ彫刻に至り、これからも発展していく。制作に意味がないように思えることもあるけど、考え作ること、技術、素材との関わりなど、まだまだできることがたくさんあるし、ささやかで誠実に造形と向き合い、ちょっとずつ進むだけでいいのではないかと思える。まだまだ読み始めなので、ちょっとずつ進めよう。 空や雲、海や草木などの自然が一番美しいな思うし、ほっとする。今日も空を飛ぶ渡り鳥を見て心が静まる。アート作品も含めた人工物は、やはり自然には及ばないなと思う。最近は美術館に行って作品を見ても、捨てる時の分別はどうするんだろうと考えてしまう。 手で何かを作ったり描いたりすることは楽しいけど、本質は素朴で個人的な活動ではないのかなと思ったりする。